「白木みこし」は大正十四年、当時野田に住んでいた立川(たてかわ)流の宮大工「佐藤里次則
壯
(さとう・さとじのりたけ)」により製作されました。今年(令和四年)で製作されてから九十八年の歳月が経ち、傷みが激しくなったので修繕に出すこととなり、修繕期間は令和四年十月から令和五年の六月にかけて行なわれ修繕が完了しました。
上花輪香取神社内神輿蔵から出された白木みこしが修繕業者である我孫子市の「椎名匠店」さんへ引き渡されました。
白木みこしが分解され、痛んだ箇所の修繕と金属部分には金メッキが施されます。白木みこしの特徴でもある彫刻は彫刻師「石川信光」によるもので、代表作に現国会議事堂参議院玉座鳳凰彫(玉座とは国会開会式に天皇陛下がお座りになる御席の事)、柴又帝釈天本堂胴羽目板彫(慈雨等潤の図)、等その他作品は関東一円に散在されており、木彫師界に広くその名を知られた名匠です。
白木みこしの無垢の木地がクリーニングによりきれいになりました。現在は金具の金メッキが出来上がるのを待っている状況です。神輿本体の箱台(はこだい)や長押(なげし)、本柱にも彫刻(地紋)が刻まれている神輿はめずらしいとの事です。
錺金
具(かざりかなぐ)の金メッキがほぼ終わり、神輿本体への取り付け復元が行なわれています。前回、彫刻のすばらしさを紹介しましたが、
錺金具の
ひとつひとつを見ても
錺
師の職人技のすばらしさを感じさせるものがあります
。
ほぼ神輿の組立て復元が終了に近づき、胴廻り下部の腰組み、四方鳥居の位垣(いがき)、擬宝珠(ぎぼし)高欄が復元されて完成となります。
「椎名匠店」さんでの修繕が完了し、お披露目されました。上花輪神輿は素材の良さと職人技の何たるものかを有のまま見せてくれる江戸神輿中屈指の逸品です。百年の歳月に耐えつつ、神輿と生きて来た人々の夢と、神輿製作者の意を踏まえ、神輿の原型を保ちつつ、末永く後世に伝えていくことが必要ではないでしょうか。
六月十八日に修繕が完了し、仮のお披露目がされましたが、七月二十一日の上花輪夏祭りに白木みこしが渡御され、正式なお披露目となりました。
飾り紐(かざりひも)と瓔珞(ようらく)に隠れて、外見的には神輿本体の修繕前・修繕後の状態がわかりずらいですが、実は今回の修繕の内容には神輿本体の修繕以外に、飾り紐の長さの調整、休み台(馬)の新調なども含まれています。修繕前の飾り紐の長さを短く修繕して、紐房(ひもふさ)の位置が丁度よい高さになりました。
今回、九十八年ぶりとなる修繕は、我孫子市の「椎名匠店」さんの神輿師・椎名正夫様により修繕して頂きました。素人ではわからない細部まで、匠の眼と技により丁寧に修繕して頂き、大正十四年製作当時の「白木神輿」の姿を蘇らせることができました。心のこもった、ご丁寧な修繕作業に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
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